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駅前のカラオケ店の一室へ入ると、理恩はドリンクの他にメニューにあるスイーツの類を全て注文した。おかげでふたりにしては広いと感じていたテーブルはパフェやらケーキやらで埋め尽くされた。
「げ。これ全部食べるつもり?」
「梢と違って脳みそ使ってるからな。糖分摂取しないと」
いちいち癇に障る男だ。糖尿病にでもなるがいい、と梢は心の中で呪った。
とっかかりとして、今日の昼休みに録音した周との会話を理恩へ聞かせると彼は「そろそろ会うか。兄貴の方に」とスプーンを咥えながら言った。
「え!」
「何驚いてんだ。最初からその為に弟の方に近づいたの忘れたのか? 鳥頭か?」
「人を殴りたいと思ったのは、室生くんが初めてだわ」
そう言ってクールダウンする為に梢はアイスティーを口にした。
「私だって野神さんが無念の死を遂げたのなら真実を白日の元に晒したい。ちゃんと成仏させてあげたい。でも、小嶋先輩はいい人だと思う。今も苦しんでるのに私がお兄さんを疑うようなことをしたら傷つける……」
「なんだ。なんだかんだ言って惚れたのか」
「な、な、な、何言ってんのよ! ひ……人として、よ。それに小嶋尊が犯人だなんてやっぱり思えない……」
「やっぱり惚れたんじゃねえか」
梢は真っ赤な顔で唇を噛み締めた。
「じゃあおまえは降りろ。俺ひとりでやる」
「何でそうなるのよ。他の可能性も考えたいって言ってるの」
「例えば?」
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