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神楽坂が指を置いた場所には、優しく微笑んでいる男性が写っていて、その写真の下には“英語科:野神慎也”と印字されている。
それをじっと見る理恩は眉間に皺を寄せた。
「どう?」
横から梢が声をかけると、理恩は「だいぶイメージ違うけど、多分この人」と答えた。
「それって……つまり」
「ああ、この学校に娘の死に関係してる何かがあるのは間違いなさそうだな」
生霊らしきものが、野神沙耶香の父親だとわかる前は、事件に関与している人物が、証拠となるものをあの教室に残してきてしまったことを気がかりなあまり、生霊を飛ばして探しているのかとも理恩は考えていたが、実の父親となるとその線はない。
と、なれば野神慎也は何かを掴みながらも証拠を見つけられなかった。あんな風に魂を飛ばしてまで必死に探すものとなればそれしか思い当たらない。
「大森部長、神楽坂副部長」
理恩は初めてふたりの名前に役職名をつけた。
「なんだ、室生!」
「なに? 室生くん!」
その事が余程嬉しかったのか、はたまたいよいよ役に立てると思ったのか、ふたりのメガネの奥の瞳がキラキラと輝いていた。
「なんとかして野神先生と会いたい。元生徒として連絡をとって欲しい」
「喜んで!」
「任せてちょうだい!」
やっと事件の真実に一歩近づいた――誰もがそう思った。
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