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梢も感じていたからだ。今は旧校舎に留まっている野神沙耶香の霊の気配が、僅かに少しづつ――だが確実に新校舎の方へ近づいていることに。
***
その家屋は、吉祥寺の閑静な住宅街の中にあった。
新興住宅地なのだろう。同じようなデザインのものが幾つも並んでいる。
オカルトミステリー研究部の面々は、ここから徒歩15分のところにある駅で待ち合わせをしてから歩いてきた。ちなみに話し合った結果、制服で訪問することになった。神楽坂が機転を利かせて菓子折りを持ってきた。梢にはその発想はなかったので助かった。
「ここよ」
そう言って神楽坂が指差した先に【野神】と記された表札があった。
門から玄関までのアプローチには白い砂利が敷いてあった。玄関先には大きさの異なる鉢植えが幾つか置いてあるが、どれも枯れている。
「なんか……緊張するな」
大森がインターホン前で深呼吸を繰り返していると、横から腕が伸びてきて、躊躇いもなく呼び出しボタンを押した。理恩だ。
少ししてからスピーカーから男性の声がして、6人は門の奥へと進んだ。
「いらっしゃい、よく来たね。ここは学校からは少し遠いだろう」
玄関を開けてくれたのは、野神慎也、本人だった。
学校誌に映っていたよりも随分と痩せてしまい、頬がこけてしまっている。
別人と言われても納得してしまう人が殆どだろう。
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