04.鍵

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「お久しぶりです。あの、すみません、大勢で押しかけてしまって」  神楽坂が頭を下げながら、野神慎也へ菓子折の入った紙袋を差し出すと、野神慎也は「構わないよ。こんなに賑やかなのは久しぶりだ。これ、皆で食べようか。お茶を用意してくるからここに座って待ってて」そう言って、客間である和室へ案内してからキッチンへと消えた。  この家に入った時に最初に感じたのは、線香の匂い。  それと生活感のなさだった。 「紅茶でいいかな」  程なくしてお盆にカップとティーパックの入った箱を乗せた野神が現れた。 「お構いなく」  神楽坂が席を立ったので、梢もそれに倣って立ち上がった。 「手伝います」 「ああ、悪いね。ポットを持ってくるよ」  スマートに動く神楽坂とは反対に、立ったはいいが、何をしていいのかわからない梢は再び腰をおろした。 「菓子でも出してりゃいいんじゃねえの?」  相変わらずの無表情で理恩が梢を馬鹿にしてきたので、梢は「今やろうとしてたのよ!」とムキになって菓子折りの包装紙を剥がし始めた。 「お待たせ。それにしても、こうやって沙耶香に線香をあげに来てくれたのは君たちが初めてだよ。ありがとう」  大きなテーブルの端でカップにお湯を注ぎながら野神がしみじみと言った。     
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