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04.鍵
「梢、これを」
いつもの報告を終えた後、祖母はベッドの脇にある木製の棚から漆黒に輝く数珠を取り出し、梢へ差し出した。
「これって、おばあちゃまが愛用してる数珠だよね?」
祖母は頷くと「ばあちゃんをずっと護り、そして冷静さと勇気を与えてくれたものだよ。これからは梢が持っているといい」と言った。
「え……いいよ! だって大切なものなんでしょ?」
「大切だから梢に渡すんだよ。このお数珠は誘惑からも護ってくれる。悪霊というのは人の弱さにつけこんで惑わせてくるものだからね。しっかりとした意志を梢が保てるように手助けをしてくれるはずだよ」
「でも……」
祖母の手には梢にはない皺が幾つも刻まれていた。その枯れ木のような手が梢に向かってもう一度差し出される。
「持っていなさい」
「……わかった。大切にする」
梢は丁寧に数珠を受け取ると、しっかりと胸に抱いた。
「それと、梢は気は強いくせに情に絆されやすいところがある。だから憑依もされやすい」
梢は「う!」と短く声を出した。祖母の言う通りである。
「魂を重ねろとは言ったが、絶対に同情はしてはいけないよ。でないと引きずり込まれる」
「わ、わかった!」
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