愚者の幸福論

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「……それで。どういった用件でしょうか」 私が促すと、ビクッと一瞬身体を硬直させてから一度大きく息を吸って吐いた。 そしてあのね、と語り出す。 「阿部くん、来なくなったでしょう? ……その前は、前田くん。あれね、月島さんのいう通り一部の女の子達がお金取ったりトイレで殴ったりしたからなんだ。それで、実は……前田くんの時、私も一緒にそこにいたの。ちょ、直接何かしたんじゃあないけど、そこにいて、ただ見てた。嫌だったの。怖くて言えなくて。それで、月島さんのところにいった。ぶっちゃけると、最初は誰でも良かったんだ。でも、みんな誰かしらとグループ作っていたから、入りにくくて……しかも私、クラスのみんなからは佐々木さんや磯辺さんのグループの人間って思われてるみたいで。だから……いつも一人でいる月島さんのところに」 ……成る程。突然すぎるとは思ったが、随分身勝手な理由で纏わり付かれていたようだ。 「そっか。で? 贖罪がしたいなら本人に言ったら? 私はそれらの件についても、クラス内の事情にも一切関与していないんだけど」 出来るだけ醒めた口調で言った。 実際くだらないと思っていたし。     
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