愚者の幸福論

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「……それじゃあまず、グダグダお喋りするのは止めた方がいいかもね。授業中だし。あ、そういう意味で言うと、そもそも授業中は立ち歩いたりしないで自分の席でさ……まぁしっかり勉強しろとは言わないけど、せめて静かにスマホ弄るなり漫画読むなりしてた方がいいんじゃない。小学生でも出来ることが出来ない奴のこと、人はカッコいいとは言わないだろうし」 「あぐっ……! 正論過ぎて何も言えないや……じ、じゃあ、この授業の後お話しようね……!」  私の言葉に怒ることもなく、佐藤はごめんと顔の前でジェスチャーしてから自分の席に帰っていった。 苦笑を浮かべられるあたり、佐藤はまだ良心的だと思った。 私の席に近い人間には、今の私の言葉が聞こえていただろう。 だが、それで己の行動を改めることはなく、変わりに私を鋭い目で睨み付けてくるのだ。 なんて愚かなのだろう。 今日びこんな荒れてるクラスも珍しい気がするが、まだ学校に来ているだけマシなのだろうか。 そんな偏差値の低い学校を選んだつもりはないのだが。 気分が萎えたので、佐藤を観察することにする。 彼女は教科書やらノートやらを机に広げた後、何かをノートに書き込み始める。 が、ものの数分で眠りについた。 教科書があるという奇跡を垣間見た。 いや、持って帰っていないだけか。  楠は歴史の授業を担当している。 クラスメイトは担当の先生によって、授業中の立ち居振舞いを変える。 器用なものだ。 それから佐藤は、授業が終わる度に私のところに来た。一方的に話をする彼女との時間は非常に無利益だったが、実害があるわけでもないので放っておいた。
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