愚者の幸福論

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 ゴールデンウィークが明けると、今度は教室の一番右端前にいた阿部が学校に来なくなった。 「――今日――で――いって――さい――」  相変わらず、楠の声は聞こえない。 ここまでくると喧騒どころの騒ぎではない気もする。 赤子の泣く声かバイクのエンジンを吹かす音か……ドラムを叩く音か。 それぐらいの騒々しさで、教室内は満たされていた。 一体何が楽しくて、そんなに大きな声を張り上げるのか。 理解できない。 楠は、そう言った状況でも、声量も顔色も変えずに話し続ける。 ある意味、一番狂っているのは楠かもかもしれないと感じた。 それとも、内心点で仕返しするタイプなのだろうか。 一年の時には関わったことがないから、いまいちどんな人間なのか掴めない。 「……ねぇねぇ月島さん知ってる? 前田君も阿部くんも、うちのクラスの女子たちに苛められてたんだよ」 私の方に体を少し寄せて、囁くように佐藤は言った。 「ふーん……どーせあのへんでしょ。佐々木とか磯辺とか」  この辺りがクラスのヒエラルキー最上層である。 最近にしては珍しい、ギャルである。 上から下まで見た目から頭が悪そう。     
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