愚者の幸福論

6/17

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
人を見た目で判断してはいけないとか言うけれど、実際見た目はかなり重要だ。 何故なら、いつだって人間は何かを比べたがっているから。 頭はいいけど見た目がダサい奴に、人は寄り付かないものだ。 逆に、見た目はいいけど頭は悪い奴に、人は寛容だったりする。 どれだけキレイゴトを並べても、事実がある以上、それは何の意味も持たない。 この教室や、自分達の周りでは今は強気でいられても、そこから将来一般的な幸福に近付くことは、彼等には難しい。 既に道を踏み外していることを、低俗故に気付いていないのだ。 「まぁそうなんだけど……よく見てるね」 佐藤は若干顔を強ばらせていた。恐らく自分が小声で話せば私も小声で返してくれると思ったのだろう。何をそんなに恐れているのだろう。恐れているのに、どうして話題にするのだろう。 「ん、まぁ。ああいうのには関わらないのが一番。で関わっちゃっ結果学校来ないってのが二人の出した答え。そして私は二人とも正解だと思うけど」 「……月島さんって、本当にカッコイイね。カッコイイついでに、私のお願いも聞いてくれない?」  声が尻すぼんでいきあっという間に沈んだ声になった彼女は言う。いつになく深刻そうだったが、話の流れ的に面倒くささそうなので断ろうとする。     
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加