愚者の幸福論

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「今めんどくさそうな顔した」 しかし、私のことは良く見ているらしい。佐藤に先手を打たれてしまう。 「……よくわかってるじゃん」 私がそう返すと、佐藤は両手で私の手を握り、懇願してくる。 「お願い、月島さんしか、もう頼れる人、いないの」 面倒くさい。 しかしまぁ、佐藤にしては珍しい反応だし、と、少し興味が湧く。 毎日を平々凡々と何も考えず楽しいことだけしていたとか本気で考えていそうな頭の緩いこの女が、一体どんな悩みを、よりにもよって「私」なんかに打ち明けようとするのか。 とても。 興味がある。 「はぁ……いいよ。で、なに」 「あの。ここじゃ、ちょっと……」 「なに、ここじゃ言えないことを私に相談するつもり?」 佐藤は静かに、しっかりと頷いた。 ほら、やっぱり面倒くさい。 一度大袈裟に溜め息を吐いた後、私は直ぐに席を立った。 え、え、と佐藤は困惑している。 仕方ないから補足を入れてやった。 「ここじゃ言えないんでしょ? なら場所を変えよう」 「でも、授業…」 「今更何言ってるのさ。あんなもの、授業でもなんでもないよ。そもそも私らなんていてもいなくても一緒だしね」  面倒くさいことは先に終わらせたい。 歩き始めた私の後ろを戸惑いながら佐藤がついてくる。     
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