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屋上は扉の鍵が壊れたままなので開いている。
生徒間で密かに共有されている話で、誰も壊れていることを教師に伝えないから、もう半年ほど壊れたままで放置されており、サボりスポット兼告白スポットだったりするようだ。
授業中なんかにここに来て、頭の悪そうな奴らに絡まれたら面倒だなぁと思ったが、ここかトイレくらいしか人目を憚れる場所は無いように思い、脳内会議の末この場所を選んだ。
「……よかった、誰もいない」
春も中頃、心地よい風が少しずつ熱気を帯びて体を通り過ぎている。
風に煽られた髪を手で押さえて、大分伸びてきたなぁとか、そんなことを考えた。
五月病等と腹のたつ言葉が盛んに使われる季節だが、これを冗談であろうと使うものは、恐らく年中、この症状に苛まれているだろう。
可哀想に。
そんなに生きるのが面倒なら、さっさと死んでしまえばいい。
酸素が勿体ない。
お前らが生きているだけで、この国はヒートアイランドなんだ。
「……屋上って入れるんだ。初めて知ったよ」
佐藤は景色を眺めるようにして扉を閉めた。
ギギギという音を上げて、なんとか扉は閉まる。
少しの静寂。
それというのも、佐藤がなかなか話し始めないからだ。
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