つながる

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 我が家には物置きがある。何百年も前から存在するプレハブの小屋だ。  大きさは二坪程で、物置きにしては中々の広さだ。  私は幼い頃、父に連れられてそこに入ったことがある。  暗くて、埃っぽい空間だった。  息を大きく吸うと、埃で体が悪くなるから、と母がマスクを付けてくれたことをよく覚えている。  しかし、それ以来私がそこに立ち入ることは無かった。  必要な物は大体家の中にあったし、最近は物も減ってきて、物置きに何かを仕舞うということもなくなっていた。  とある日曜日。 「天気が良いから大掃除をしましょう」  母のその一言で、私は再び物置きの中に入ることになった。  あの時と同じように、マスクで口を覆い、母に持たされた箒と雑巾を携えて、物置きの前に立った。  入り口の扉は金属製の引き戸で、ところどころ錆が浮いていた。この手の扉も最近は珍しい。   私が扉に手をかけると、物置小屋全体がみしみしと音を立てて揺れた。  あまりにも揺れるから壊れてしまうのではないか、と一瞬考えた。  しかし、物置小屋は案外丈夫らしく、ただ音を立てるだけで壊れることは無かった。そうでもなければ、何百年も残らないから当たり前かもしれない。  もう一度マスクの位置を確かめ、私は中に足を踏み入れた。  すると、ふわりと床に積もっていた埃が舞った。  足には粉っぽい何かがまとわりついている。  新品の靴を履いていることを後悔した。外に出たら、綺麗に洗わなければ。  掃除道具と一緒に持たされたライトを床に置くと、ようやく物置きの中が見渡せるようになった。  ぽっかりと何も置かれていない空間が中央にあり、壁には金属で造られた棚があった。  幼い頃の記憶のままの光景だった。  とりあえず棚の上から掃除しよう、と考えた私は向かって右側の壁へと近づいた。  すると、こつん、と足に何かが当たった。僅かな衝撃だったが突然だったため、私は驚き小さく声を上げた。  かがんで、慎重に拾い上げてみる。  それは掌に収まる程度の大きさをしていた。形は四角。硬いが、角は若干丸みを帯びていて触れても怪我はしなさそうだった。  全体は白色をしていて、ところどころ傷が付いていた。  裏返すと、今度は黒い板のような物がはめ込まれていた。
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