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私は、本が好き。それは今でも変わらない。
でも、そう思えば思うほど、高校生時代のことを思い出してしまう。あんなに感情的になったのは初めてだった。
どうして、あんなことを言ってしまったのだろう。物事についての見方は、人それぞれなのに。
それに、本に関心の無い人は、他にもたくさんいた。好きな作家を批判する人がいても、笑って過ごしていられたのに。
私は、本当は分かっていた。
小林君のことが好きだったのだ。だからこそ、理解して欲しかったのだ。好きな人に、自分の好きなものを共有できたら、どんなに素敵だろう。そう思っていたから、とても悲しかった。辛かった。
この辛さは、なかなか癒えることは無かった。何とかしようと本屋に来ては、またあの時のことを思い出す、その繰り返しだった。
これは、私への罰なのだ、と思った。後悔を一生忘れないために、私は好きなことをするたび、苦しめられるのだ。
そして、今日もまた、本屋に来た。すると途端に、複雑な感情が静かな呼吸を邪魔するから、私は、早く物語に没頭したいと思った。
しばらく、目移りするのに任せていた私の目が、売り出し中っぽい小説の表紙で、ふと留まった。
そこには、思い出すまでもない小林君の名前が記されていた。タイトルは、『一冊の本』。
私は、まるで小林君と再会したような嬉しさで、その場で少し泣いてしまった。もしかしたら、家でも泣いてしまうかもしれないので、涙で濡れないようブックカバーを付けてもらった。
その本は、こんな物語だった。
ヒロインの女の子は、大事にしていた本を捨てられてしまう。その本を復元するために、主人公の男の子と、書かれていたことを思い出しながら再構築していく。最終的には、全然違うお話になってしまうが、二人の好きなものがたくさん詰まった、世界に一冊の本になる、という物語だった。
とても短い小説だったが、私は感動して、やっぱり泣いてしまった。
そして、ところどころ恥ずかしい既視感が垣間見え、一人で照れながら読んでいた。ヒロインの女の子の名前を見て、最初、どきっとしたが、よく見ると古田ではなく吉田さんになっていたことには笑ってしまった。
きっと、両想いだったのだろう。私は、自信満々にそう思った。誰が何と言おうと、私の中ではそういうことにしておくのだ。
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