I love you.

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 漱石(そうせき)も、太宰(だざい)も、芥川(あくたがわ)も、小説で愛を描こうとした。  そして、その試みは見事成功している。今や、I love you.と聞いて脳裏に月を浮かべない人はいないし、人間の合格者もいないし、何より全人類が色艶(いろつや)にうつつを抜かしている。それもこれも、数々の文学の武者たちが身を削る思いで、自らの愛を露出したおかげだろう。  というわけで、俺も、愛を露出しようと思う。  俺が、愛を描く文豪を愛するようになったきっかけを語るには、まず、高校時代まで話を遡らなければならない。それは、俺が、スポーツ系男子だった時代。内輪ノリの内輪にいた時代。そして、ある女の子のことが好きだった時代。  あの時代、俺は本が大嫌いだった。
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