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記憶を買います。
カラン。
「いらっしゃいませ。そう、また来たのね。対価は記憶。“きのう”をいったい何度やり直せば気が済むわけ? あなたからもらえる記憶なんてほとんど……」
「お願い……。私はもうどうなってもいい、あともう少しだったの。あともう少しのところで、いつもいつも……っ!」
「前にも言ったように、人の運命なんてそう簡単には変えられないものなのよ。諦めたほうがいいわ、もうお帰りなさい」
「……お願い」
すがるようにお願いをされ、店主は深いため息をもらす。
「理由はわからないけど、そこまで言うのなら。これで最後よ」
店主はそう言って、一冊の本を手にすると、本を広げた途端にまぶしい光が放った。
一日をやり直すには、一年分の記憶を必要とする。
客の一年分の記憶が、この本の中に吸い込まれていく。
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