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カラン。
「いらっしゃいませ。そう、また来たのね。対価は記憶。“きのう”をいったい何度やり直せば気が済むの? あなたからもらえる記憶なんてもう……」
「お願い、これで最後にするから……っ!」
「フフフ」
店主は肩を揺らしながら笑う。
「なにが、おかしいの?」
「あら、ごめんなさい。だって、あなたからもらえる記憶、もう半年分しかないんだもの」
「……半年……、うそ……」
「嘘じゃないわ。ほら、見て。あなたがこれまで生きてきた記録書よ。あなたがどこで生まれ、どこで育ち、初恋の人とか、初デートとか、高校のときにインターハイ出場したとか────。あ、そういった記憶、あなたにはもうないんだっけ……」
一冊の本を片手に、青ざめる彼女の前でクスクスと笑う店主。
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