記憶を買います。

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「カレン様、紅茶をどうぞ」 「ねえ、グレアム。人間って欲深い生き物だって思ってたけど、みんながみんな、そうだとは限らないのね」 「自分の命に代えてでも守りたいものがある。美しく散った彼女の願いは、果たして叶ったのでしょうか」 「さあ、どうだか」  頬杖をつきながら、角砂糖を三個入れ、スプーンでかき混ぜる。   「うん、いいにおい」 「それはそうと、カレン様。彼女の本はいかがなさいますか? あの欲まみれの本たちといっしょにしてもよろしいのでしょうか?」 「そうね、紅茶を飲みながら、考えるわ。とても興味深い人間だったから。それで、()()()?」 「他の人形たちと同様、ショーウインドーに飾りましたよ。あとでご覧くださいな、美しく散った彼女に、誰もが心を奪われることでしょう」 「そう」  店主のカレンは短く答えると、執事のグレアムから受け取った本を眺める。  背表紙に刻まれた名を、ゆっくりと指でなぞる。  そして紅茶を飲みながら、記憶を売った者たちの記録書を読む。  それを楽しみに今日もまた、彼女は新たな本のページをめくるのだ────。  
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