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警察は中々来なかった。
修はとりあえず、斜めに道路をふさいでいるキャンパーを後退させて、道路脇に停め直した。
前輪を踏まれたバイクのフロントフォークはひしゃげ、ホイールがあらぬ方向を向いている。髭の男は見物人たちと協力し合いながら、バイク(の残骸)を道路の外の草むらへと移動させた。
男はその後も、地元の人間らしき人々と何やら楽しそうに語り合い、ときに笑い声を上げていた。生死に関わるような出来事のあとで、よくも平静でいられるものだ。修はその姿を遠目に見ながら路肩に座り、膝を抱くようにうずくまっていた。
二人の警官が、パトカーで到着した。
修にとっては初めて遭遇する交通事故だが、彼らにはごく平凡な日常の一部だ。段取りに従うように、一人の警官が誘導棒を振って交通整理をするかたわら、もう一人が調べをすすめる。
中年の警官が髭の男からプロフィールを聞き出す声が、少し離れた修にも漏れ聞こえていた。
「えーと、イモトカズミさんね。妹に戸締りの戸、平和の和に巳年の巳で妹戸和巳、と。年齢は27歳ね」
修よりもひとつ年上らしい。
「それで、住所は?」
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