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だが、不潔に感じて身体を洗うことの何が異常だというのだろう。むしろ、汚れや病原体に無頓着な他の人々こそ修には理解し難かった。
そんな経緯もあり、どうしても旅に出る必要に迫られた修の思いついたものが、自分専用のベッドやバス・トイレと共に移動する方法……即ちキャンパーなのだ。費用や運転の難しさを差し置いても、この条件を譲ることは出来ないのだった。
その日キャンパーを運転するのは、5日前の納車の日に家の周りをひと回りして以来だった。旅の準備に思いのほか手間取り、練習の時間が取れなかったのだ。それでも計画通りに事を進めたい修は、躊躇なく都内の自宅を出発した。
車は渋滞する国道を抜け、東京都の境を越えた。高速道路は使わないことに決めている。使えば日本一周など簡単に達成出来てしまうからだ。
修の慎重な運転が功を奏し、何の問題も起きないままキャンパーは山間部へと続く道へ差し掛かった。
車の往来はまばらになり、路面には緩やかなアップダウンが感じられる。周囲の風景は住宅や商店に代わって、畑や廃品処理場が大半を占めてきている。
いきなり、一台のオートバイが修の視界に入ってきた。
対向車線を使ってキャンパーを追い抜いたそのバイクは、目の前に勢いよく割り込むように侵入してきたのだ。咄嗟のことに、減速しようと修はブレーキペダルを踏み込んだ。タイヤが甲高い悲鳴を上げて軋む。
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