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布団を奪われた僕は、太陽から逃げるように洗面所へと向かう。
そして顔を洗ってから、だるい体を引き摺ってリビングへと足を進めた。
リビングのダイニングテーブルでは、すでに兄ちゃんがテレビを見ながらトーストを食べていた。
「……おはよ」
「おはよう、やっと起きたか」
まだねむいと返せば、兄ちゃんは笑いながら直に慣れるよと返してきた。
「遊、ちょっと待っててな。もうすぐ食べ終わるから」
「うん、大丈夫。ゆっくり食べてていーよ」
僕も兄ちゃんの向かいに座って、テレビを見ながら兄ちゃんがトーストを食べ終わるのを待つ。
ちなみに、遊っていうのは僕のことだ。
『小暮 遊』、それが僕の名前。
何にも縛られないで生きて欲しい、だったっけ?そんな感じの理由でつけられたらしい
兄ちゃんが朝ごはんを食べ終わった。
兄ちゃんは「ごちそうさまでした」と言って食器を片付ける。
「お待たせ。おいで、遊」
ソファーに座った兄ちゃんがこちらに手招きしてくる。
やっとだ。
「ん、」
僕は兄ちゃんの膝の上に乗っかって、目の前に晒されるその首にカプリと噛みついた。
「ん、ふぅ、んん」
『ズッ…ズズ……』という生々しい音と一生懸命に血を吸おうとする声が入り交じって、静かなリビングに響いた。
喉を通っていく血液に満たされていく感覚がする。
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