side 楓 2

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なにがどうしてこうなったのか。 私の腕を掴んで、さっさと歩いていく松成会長の背中を見ながら考える。 下校時間は過ぎている。 たまたまあの教室を見廻りに来た松成会長と一緒に下校してもおかしくはない。 分からないのは…… 「あの、松成会長。手を……」 そう。 なぜか松成会長は楓の腕を掴んだままなのだ。 「正臣」 「へ?」 「役職で呼ぶな。正臣でいい」 思わず間抜けな声を出した私に、正臣がクスッと笑ったのを、確かに見た。 この人でも、笑うんだ。 そういえば、教室から出るときも笑ってたっけ。 失礼ながらそう思った。 いやいや。 そうじゃなくて。 「あの、正臣くん。腕を……」 「あぁ、これ?」   正臣はチラッと掴んだ腕に目をやると、何事もなかったかの様に離した。 これで少しは緊張から解き放たれる。 そう思ったのは一瞬で、すぐに楓は愕然とした。 正臣は、腕を離してそのまま、手を繋いだのだ。 それも、指を絡ませる、所謂恋人繋ぎと言われるもの。 一気に顔に熱が集まった。 たぶん、今私の顔は真っ赤になっているだろう。 辺りが暗くなっててよかった。 こんな顔、見せられない。  「家、どこだ。家の前まで送ってくから」 「あ、一駅先の…」 問われるまま答えてしまう。 完全に正臣のペースだ。 でも、なんで。 恋人繋ぎは恋人同士がするものだ。 だからこそ、恋人繋ぎなんて言われてるんだろうし。 じゃあ、なんで今私達はそれをしているのだろう。 私より一歩先を歩く正臣の背中を見つめるが、答えは出ない。 ただ、私のペースに合わせて歩いてくれるこの人と、こうして手を繋いで歩くのは、不思議と嫌じゃなかった。 もしかして、私……
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