- 序章 - 猫の名はタン

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- 序章 - 猫の名はタン

飢饉と疫病が続く時、 後悔と見直しの時代と人は言う。 ヨーロッパ地方の乾いた国、 この一帯にある小さな街が過半数は壊滅状態で手の施しようが無いほどにまで追い詰められて居る。 優秀な医者でもどうすることもできず死に絶える人を横目に、毎日をただ過ごすしかなかった。 この街は、谷河が隣接して北には内海、東には海がある場所に位置する。 土壌はほぼ、砂漠と乾いた岩石に覆われ荒れて居るが、農業開拓時代の土壌開発により、大河川が通る恵まれた条件によって住人の殆どが農業に携わっていた。 作物は土壌で限られて居るが、隣国での交易には充分役に立ちとても繁栄した国だった。 古くからの部族衝突も相俟って、 常に戦乱との隣り合わせで、飢饉も重なり交易も次第に薄くなっていく中、 国境も遮断状態で未知の病に染まっている。 神は我々に慈悲を与えてはくれないのか‥ 毎日をそう嘆いているこの街にあるたった一つの教会の牧師が言う。雨乞いをしてもこの地は年に数度しか降らない少ない雨量しかない、この不運な毎日と疫病を洗い流してはくれないかと、毎日教壇に向かい祈るだけしかない。 牧師にも家族があるが、疫病は何とか無事に逃れて居る、もっとも飼い猫が居るのだが、朝晩にフラついているからそれが唯一の心配事で、どこへ行くかわからない猫の行動で、疫病を拾ってこないだろうかと頭を悩ませている。人間なら判断や口コミで避けられるが猫は所詮動物、一層の事隔離して外出禁止にしようかと思っている。 猫の名前はタンと言う、 この地域では英雄を意味する言葉。 ある晩のこと、家族が寝静まった頃何時もの様にタンは夜の散歩に出掛けようと教会を後にする。 猫なのだから夜行性は当たり前だが、 このタンは生まれ持って居る、他とは違う能力がある。 他の猫たちの一般的な視界は、青と緑しか無いがタンは人間同様にカラフルな視界で見る事が出来る、それにも益して疫病の様な菌類やその病を患ってる者も見通せることが出来た。 飼い主の牧師は知らない事だから、余計な心配をしてるだろうが平気な顔をして出かけて行った。
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