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楽しい時間
それから僕は、毎週土曜日になると、銀ちゃんに会いに神社の裏側に行って名前を呼んだ。
名前を呼ぶと、銀ちゃんはいつもすぐに飛んで来て、僕を連れてまた、飛んで行く。
あの広場だけでなく、町の景色が見渡せる山の頂上や、虹のかかる滝や、綺麗な石がきらきらと光る洞窟にも連れて行ってくれた。
冬休みに入ってからは、毎日会いに行っていっぱい遊んだ。
雪が積もって、普段なら僕の足じゃ歩けない山道も、銀ちゃんはなんなく飛んで行く。真っ白な雪景色の中で、銀ちゃんの銀色の翼は、まるで宝石のように輝いて、とても綺麗だった。
ある時、銀ちゃんが、僕が毎日山に遊びに来るから心配して聞いてきた。
「凛の親は何て言ってるんだ?」
「お父さんとお母さんは、朝早くに仕事に行って、夜暗くなってから帰って来るから、家にはおばあちゃんしかいないよ」
「そうか…。おまえの祖母は気にしてないのか?」
「兄ちゃんと遊んでると思ってるよ。あとは幼稚園の友達と。大丈夫!凛、秘密は守ってるよ!」
僕の話を聞いて、銀ちゃんはにこりと笑うと、僕の頭を優しく撫でてくれた。
でも、おばあちゃんは僕がどこに遊びに行ってるのか、気になってたみたいだった。
お正月の3日間は、銀ちゃんに会えないと言われてたから、家で家族とのんびり過ごした。
次の日の4日から、お父さんとお母さんは仕事に行った。僕は銀ちゃんに会いに行く為に、ジャンパーを着て玄関で靴を履いていると、おばあちゃんに「凛」と呼び止められた。
「なあに?おばあちゃん」
「あんた、銀ちゃんとやらに会いに行くんやろ?」
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