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「合理的というか効率的というか、シンプルな思考をするんだね」
「誉め言葉と受け取っておきましょう。それで、マオさん。私は確かに「相沢製紙」の人間です。私は何を貴方にお話すれば良いのでしょう?」
マオはスッと外坂の手元を指差した。そこにあるのは外坂が音を立てながら引きずっていた出張で使う日用品が入ったキャリーケースだ。
「さっき警官から聞いたんだ。中に人が取り残されている。だから時間がない。詳しい話はビルの中でしよう。かなり危険な仕事なんだけど、内部を知っている人間とそのキャリーケースが僕には必要だ。ついてきてくれる? ソトサカさん」
パトカーや消防車が現れる現場で一般人を必要とする事態が進行している。
確かにここから先は外坂の想像できない危険があるかもしれない。
しかし、外坂は共に働く人間は絶対に見捨てないと決めていた。
だから10ヶ月の出張も快く引き受け、トラブルに苦悩するタイの工場員達と就業後も何度も話し合ったのだ。
誰が取り残されているにしても放っておくわけには行かない。
「行きましょう」
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