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初めましての事件
「そ、そうですか」
自分より小柄なマオに任せるわけにもいかない。外坂は諦めてキャリーケースを運ぶことにした。
「ちなみに、中に高価なものはある?」
「ノートパソコンが入っています。あと財布とか」
「貴重品は全部そこの受付カウンターにでも置いていって」
「ん?そうすると大したものは残りませんが? そもそも私のキャリーケース…何に使うんですか?」
「それは後で説明する。僕のことプロって信じてくれたんでしょう? だったら言うこと聞いて」
マオの態度は先程までの軽薄なものではなかった。シンプルな指示と周囲を確認し続ける細い目。彼の行動と言動は確かにプロに相応しい雰囲気を醸し出していた。
実際に彼がどういうやり方でこの事故を解決するのか知らない外坂だったが、餅は餅屋。素直に指示に従うことにした。
貴重品だけをカウンターに残し、外坂はマオの後ろに続いてエレベーター横の扉を抜ける。
リノリウムで作られた無機質な階段が二人を出迎えた。
マオが階段を登り始める。
外坂はキャリーケースのハンドルを掴み、ゆっくりとそれを持ち上げるとマオの後に続いた。
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