初めましての事件

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さらに青い帽子を被った鑑識課と思われる人間が外坂の目の前に立ち入り禁止の黄色いテープを貼っていく。テレビの中でよく見るテープだったが、まさか自分の職場の前に貼られることになるとは思いもしなかった。 このまま帰る気にはならなかった。しかし、これ以上警官に食ってかかっても拘束されるだけだろう。 外坂はどうすることもできずにテープの前で呆然としていた。 「お兄ーさん。ここの会社の人?」 ふと、背後からやたら軽い男の声が飛んでくる。 振り返るとそこには季節的に少々気の早い厚手のコートを着た背の低い青年が立っていた。 日本人離れした赤く長い髪。病気なんじゃないかと思うくらい白い肌。ニヤついた笑みと細い目は外坂を馬鹿にしているようにも思える。年齢はかなり若い。直感で二十歳は超えていそうだと思ったが、高校生だと言われても納得してしまいそうだ。 外坂は仕事柄、相手の第1印象を大事にする。重要な取引をするにあたって、相手がどういう人間なのか、言葉を交わすよりも先に見た目から情報を得ることで。相手に対する自分のスタンスを決めるのだ。 この青年は信用するのが大変そうだ…。 よって赤毛の青年に対する外坂の第一声は冷たいものとなった。 「貴方は誰ですか? 知らない方にいきなり自分の身分を明かすのは躊躇われるのですが?」     
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