人生を貸す懐中時計

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目覚めると、僕は『さっき』と同じアンティーク調の椅子に座っていた。 さっきまで飲んでいたはずの紅茶のカップは、いつの間にかサイドテーブルの上から無くなっていた。 「お久し振りですね」 店の男性は、わざとらしく口角を上げ、僕に手鏡を渡しながらそう言った。 「『お久しぶり』って、まだ全然時間が経ってないじゃないか」 だが僕はすぐに違和感を覚えた。 声がしゃがれていて、自分のものではないような感覚だったからだ。 恐る恐る覗いた鏡の中には、シワだらけの老人の姿が映っていた。 僕の表情に合わせて、寸分の狂いもなく動く鏡の中の老人の姿。 「何だよ、これ。鏡じゃなくて、画像がどこかと連携してるとかじゃないの?」 複数の血管が浮いた手の甲にやっと気が付き、それを(ひるがえ)して、ざらついた頬に触れる。 「流石に嘘だろ……」 僕はついさっきまで、14歳の中学生だったのだ。
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