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だけど僕はある事に気が付いてニヤリと笑った。
「やっぱりドッキリか何かでしょ?だってお兄さんは全く歳を取ってないじゃないか。
紅茶に睡眠薬とかを入れて、僕が眠っている間に特殊メイクとかしたんじゃないの?
声が変になったのもやっぱり紅茶に何か入れて……」
僕はカリカリと顔面の皮膚を引っ掻いたが、直に痛みが走った。
まるで本物の皮膚みたいだ。
「それでは一度、外の世界を覗いてみましょうか」
店の男性が外に通じる扉を開けた。
皮膚が痛いのは、きっと協力な糊とかが張り付いてるからだ。
外へ出たら、きっとネタバラシされるのだろう。
そう思いながら椅子から立ち上がろうとした途端、よろけて転びそうになった。
「ご無事ですか?」
「……う、うん」
店の男性が即座に助けてくれたのでよかったが、何なのだろうこの身体の違和感は。
体がダルいというか、思うように動いてくれない。
目も霞んでるし、ヤバイ薬を盛られたのかな。
「さあ、参りましょう」
店のは涼しげな笑顔を見せながら僕をさりげなく支え、扉の外側に連れ出した。
扉の外には、陰鬱とした廊下が広がっている。
そう。ここは廃墟ビルの最上階。
突き当たりにある階段を上りきった所にあるドアを開けると、『さっき』まで僕がいた屋上があった。
「……『70年前』にあなたと私が出会った場所です」
数メートル先にあるフェンスは、霞んでしまっている目を凝らして見ても、さっきよりも劣化している事が分かった。
男性から離れ、ゆっくりと歩みを進め、確認してみる。
『さっき』まで僕が両手でしっかりと握りしめていたはずのフェンスは腐敗し、既に『掴める』というような状態ではない。
フェンスの向こう側に広がる景色を見てみる。
さっきまで見ていた風景とはまるで違った。
見た事もないような色や形をした建物。
恐る恐る下を除き込むと、カラフルでおかしな形をした車が沢山走っている。
まだ信じられない。
町中を巻き込んだ大掛かりなドッキリかもしれないけれど、僕みたいな一般人を騙して視聴率なんか取れる訳がない。
「信じて頂けないのなら、もう少し外の世界を覗いてみましょう」
店の男性はさっき屋上へ出たばかりのドアの方向へ、指を揃えた手の平を向けた。
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