人生を貸す懐中時計

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再び店の男性に支えられ屋上のドアの方へ戻る。 店の男性が、さっき閉めたばかりのドアを開いた。 「え……、なんで……?」 階下(した)へと続く階段があったはずなのに。 ドアを抜けた先には、僕が通っている中学校の正門が、数メートルの道を挟んだ真正面に建っていた。 しかも創立10年にも満たないはずの校舎はかなり古びている。 「ど●でもドア……?」 「そのアニメは30年前に最終回を向かえています」 科学的に説明ができない現象を前に、僕は『70年経った』という店の店の男性の話を信じざるを得なくなった。 「…………ド●えもんの最終回はどんなだったの!?コ●ンの黒幕は結局誰だったの!?」 口をパクパクさせてから数秒経ってやっと出た言葉がこれだ。 どれだけ僕の人生は薄っぺらいのだろう。 「残念ながら、時間はございません。 70年前、私は確かに伝えました。 『あなたが他の方に人生を貸し、あなたの人生を借りた方が亡くなった後、一時間だけあなたの意識が戻る』と。 ですので、私はあなたに残りの僅かな時間で『あなたの70年間の人生』をお伝えしなければならないのです」 「黒幕の名前くらい5秒で言えるじゃん……」 店の男性は少し困った顔をしながら僕の耳に手を添え、囁いた。 その声を捕らえた僕の瞳孔は、二回り大きくなっていたに違いない。 「……そうだったんだ!!経緯が全く分からないけど」 「時間がございません。早速当店に戻り、『あなたの人生』に何があったかご説明させて頂きます」 再び、ドアをくぐると、あの店(・・・)が目の前に現れた。 僕の不思議な宝飾店が。
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