人生を貸す懐中時計

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+ 地獄のような日々だった。 無視されるのもノートに落書きされるのも当然。 プールでは水着を脱がされる。 五人くらいで僕一人を羽交い締めにして、海パンを剥ぎ取られてビーチサイドに投げられるんだ。 ずっと水に浸かっている事はできないし、教師も見て見ぬ振りだから、僕は全裸でプールから上がり海パンを取りに行く。 女子達がキモいキモいと絶叫する。 給食の時は、班ごとに6人ずつ机をくっつけて食べるのだが、前や隣りとの机の感覚が少しでもあいていると、担任が「お前、イジメしてんのか!?」と、ものすごい剣幕(けんまく)で怒鳴る。 掃除の時間に僕がゴミ箱を持って焼却炉に行く途中で、違うクラスのイジメっ子逹が僕からゴミ箱を奪って手間を取らせる。 それを三階の教室のベランダから見ていた担任は、やっと教室に戻ってきた僕に「お前、違うクラスの奴等と遊んでただろ!!」と再び怒鳴る。 ズレてるんだよ、あんた。 担任だって結局、『あっち側』の人間なんだ。 学生時代も絶対にいじめる側だっただろ? 担任(こいつ)に真剣に相談したって解決しないのは分かりきっている。 両親に打ち明ける勇気もなかったし、心配も掛けたくなかった。
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