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「……え~ということでして~なんもなければこれで住民説明会を終了したいと思いますぅ~」
進行役はこの地区を担当する工事責任者だった。
「ん?なにかぁ~質問がございますかぁ~?」
説明会も終わり間際、一人の男が手を上げた。
中年……いや、薄汚れた作業着にボサボサの頭でわからないが、よく見ればまだ若そうな男だ。
「えっと~~~これって、桜の樹を切るっちゅうことなんか?」
「ええと……あなたは……」
「アンタじゃねえ~カッチャン、答えてくれや」
「え?」
男は俺の方を見ていた。
俺を名前……田村克也……カッチャンと呼びながら……
「本当にええんか?」
男は……岸田拓真……つまりは、たっくんだ。
「ええんか?って言われてもなあ~俺が決める話じゃない」
「そかぁ~……オマエ……やっぱ変わったな」
「な!」
オマエに言われたくねーよ!と、喉元まで出かかった声を飲み込んだ。ヤツの寂しそうな顔を見たら何も言えなかった。
「まあええ。オマエがええならええで」
「お、おい、そ、そんな……言い方ないだろう?あれは……俺のせいだって……まだ言うつもりか?」
「……オマエ、まだそんな勘違いしとるんか……そんなこと誰も言っとらんだろ?」
「う、嘘をつけ!」
「まあ、ええけ。今週末ここに来い」
「な……なんでや……」
「分かっとるやろ?あの事故の……日や。そんとき話そーや よしぼーも来るけん」
「や……約束は……できんぞ?」
「……わかった……待っとるけんな」
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