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週末、俺はキリン公園に居た。
「チキショウ拓真も義人も来てねーじゃねーか」
文句を言いながらも少しホッとした自分に気づいていた。
もう十年以上は前のこの日、ここで事故があった。
その事故で、一人の少女が大怪我をした。
俺もその場に居て……いいや、俺のせいで少女は……小嶋櫻は怪我をした。
頭を打って、記憶をなくして、遠くへ引っ越して行ってしまった。
俺はたっくんやよしぼーの目が辛かった。
俺を責めていないことくらい分かってる。
しかし逆にそれが辛かった。
だから俺のほうから距離をおいたんだ…………
やがて桜の樹の下まで来ると誰かがいることに気がついた。
「サクラ!?」
その顔を見ると、俺は思わず大きな声を出してしまった。
それは……まぎれもなく小嶋櫻だった。
ブルルルルルゥ
その時スマホが振動した。
”行けんでわりいなあ~ でも、サクラちゃん来とると思うんでよろしく~w”
拓真からだった。
拓真からのメールによると、サクラは数年前ここに戻ってきたらしい。
記憶を取り戻すため、生まれ育ったこの町へ帰っていたのだ。
「え……と……」
サクラは困惑した表情でこちらを見ている。
やはり俺のことも思い出せていない。
「さ……桜……を撮ってるんか?」
「そうです……切られるっちゅう聞いたもんで」
「……ああ……いんや……切らせやせんて……サクラは俺が守るけ」
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