第3話 あの丘に桜が咲いたらキミと

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 ある年、僕は大きな賞をもらった。  誰よりも、佐倉先輩にほめられたい。  そう祈り、僕がいつもの丘でカメラと列車を待っていると、先輩は急に後ろに立っていた。 「ええ写真、撮れたね」  びっくりしたせいで、僕は列車を撮りそこねた。 「いややぁ。ヘタクソ」  ニヤアっと笑う先輩の顔は相変わらず綺麗だった。眼鏡も、ボサボサの髪も。 「ほめてよ、先輩」 「もうほめたやん」  先輩は照れくさそうに困っていた。  僕は先輩の痩せた体を抱きしめた。もうどこにも消えないように。 「ずっと一生、ほめてもらえませんか。いい写真が撮れた時だけでいいんです」  僕を抱き返す先輩の背中に、僕は頼み込んだ。 「キミ、変な子。ウチみたいなのがええの?」  先輩は不思議そうだった。その丸い眼鏡の奥の、真っ直ぐで美しい煌めき。  それを見つめて僕は笑い、うなずいた。
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