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佐倉先輩の髪はいつもボサボサで、下手くそな手編みの白いマフラーを巻いてる。自分で編んだんだそうだ。
「キミも撮り鉄? 写真部に入らへん?」
風に絡まる長い黒髪をかきあげて、先輩はトンネルに向けてカメラを構えていた。
「ウチが気にいる写真撮れたら、ヌード撮らしてあげてもええよ?」
佐倉先輩はニヤアと笑った。
「気にいる写真て?」
「鉄道やね」
トンネルから轟音が聞こえ、一番列車が飛び出してきた。瞬間、先輩がシャッターを切った。僕も切る。
カシャカシャという音が混じって聞こえ、僕らは 一番列車が走り抜ける間、無言でシャッターを切り続けた。
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