第2話 花の咲く頃、キミは

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「ウチもう卒業や。気にいる写真はまだ?」  先輩は朝、丘の上で缶コーヒーを飲みながら言った。 「ヌードじゃなくていいんで、先輩の写真撮らせてもらえませんか」 「ウチより電車のほうがええよ。綺麗で強い」  先輩はそう言って不思議そうにした。  先輩はこんな綺麗なのに、どうしてそれを知らないんだろう。不思議でしょうがない。 「それでも撮らせてください」  もう頼むしかなくて、僕は先輩に頭を下げた。 「いやや。だめぇ」  先輩は笑って逃げて、一番列車が来た。  トンネルから走り出てくる車体の轟音。カメラを構える佐倉先輩。  僕はその先輩の、まっすぐな目の横顔を撮った。列車と、それを撮る先輩。  好きですって言おう。  この写真が上手に撮れたら言おう。  好き。  思いを込めてシャッターを切った。  その写真を見て先輩は初めて僕に、ええ写真やねって言った。 「だめって言うたのにぃ」  少し寂しそうに先輩は言った。 「ヌード……そんなに撮りたいん?」 「ヌードとか、関係ないです」  僕と付き合ってください。  そう言ったんだったかどうか。必死だった。  先輩は次の日からずっと学校に来なくなった。
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