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疲れ切ってしまった。身体的ではなく精神的に。原因は人間関係によるものなのはわかってはいるけど、応急処置すらままならない。僕なりに今までの人生で効き目のあったことはやった。雨音に包まれながら煙草を吸うこと、酒を飲むこと、金を使うこと、マスターベーション、友達に会うこと、好きな女の子に会うこと、ゲーム、勉強に向き合うこと、趣味に浸ること、本を開いて活字の世界に没入すること。すべて意味がなかった。むなしくなるばかりか余計に疲れてしまうばかりであった。彼女でもいれば慰めてもらえたり、セックスでごまかしたりできたのだろう。北方謙三なら「ソープに行け」というのだろう。自傷癖の持ち主なら一回や二回手首を切っているのだろう。不思議なことに僕はそういう器用な生き方ができない。腹の足しにもならない美学みたいなものが大事で仕方がない。かっこよく言えば古風な男なのだが、それが同年代の女子から人気がない理由なのかもしれない。そういったことを考えながら電車に乗る。雨の日の電車の中はどうして不快の温床なのか。普段なら気にも留めない他人の一挙一動が気になる。疲れ切った顔をして寝ているおじさんの寝顔にすら腹が立って、周りを威嚇するような目つきで席に座るおばさんを殴りつけて罵倒したい気分になる。
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