序章 コンバート・ユア・マインド

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序章 コンバート・ユア・マインド

 気がつくと、緑豊かな森の中に立っていた。 「・・・・・・ん?」  帰りのホームルームまで寝ていようとしたはずだが、私は首を傾げた。気付けば服装も、学生服から西洋絵画で見る様な農村男子の格好に成り果てている。  寝ぼけたまま演劇部を襲撃し、衣装を強奪、森に来て着替えたとでもいうのか。それが教室に居た状態から、この何とも言えない不可思議な状況へ到る為の最適解なのだが、そんな現実を余り肯定したくは無かった。  普段は大人しいのにあんな筆舌し難い奇行に走るなんて、インタビューでそれだけは証言されたくない私には堪えられなかったのだ。  いっその事、自我とか崩壊して幼退化しないかな、そんな面持ちで晴れ模様の空を仰いでいると、足元から猫のものとおぼしき鳴き声が聴こえてきた。  視線をそのまま足元へ移すと、そこには確かに頭から灰を被った様な猫が居た。これから精神科へ連行されるであろう私を慰めに来たのか、嘲笑いに来たのか。どちらにしても慰めて欲しいので、抱き上げようとした。まさにその時である。 「気安く触るな」     
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