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猫にすら蔑まれるとは、想定外の精神的ショックに伴い、思考が数秒ストップしたのだが、身体はこの状況下における最適解を反射的に行なってくれた。
「うわっ、喋った!?」
ビックリした時、意図してないのに言葉を発してしまうアレである。けっこう恥ずかしい、アレである。
「・・・そんな事より、敵が来るよ?」
「・・・・・・敵?」
猫に顎で示された先、ちょっとした藪の中から、スライムの様な粘質の高い半液状の物体が飛び出してきた。
「えっと・・・猫君、ナニアレ?」
「スライム」
「いやそれは判るけど・・・スライムって一昔前のオモチャで、あんなに蠢く様な代物じゃないんだよ?」
「はあ? あの国民的モンスター知らないの? 馬鹿なのかい?」
「いやいや猫君、そんな動物園に行けば会えるじゃんみたいなノリで言うけど・・・なかなか無いよ、震えまくる粘液と対面する機会」
「はぁ・・・何でも良いから倒しなよ、時間の無駄だよ」
「いや、倒せって猫君・・・俺ステゴロ(素手)なんだけど? 嫌だよ、あんなベタベタしたのに触るの」
「四の五の言ってないで、倒しなよ。あんなちっちゃいのにビビってるのかい?」
確かに、出てきたスライムは両掌で掬える程度のサイズ感である。恐ろしいというよりは、虫かごに入れて数日飼ってみたい様な愛嬌すらあった。
「仕方ないなぁ・・・判ったよ」
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