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オフィーリアの寵愛
「けほっ……また…」
最近の彼女は咳をすると何故か口内に花弁のような物が残った。口内から吐き出された濡れた花弁の色は鮮やかな赤。
まるで今し方花を食してしまったかのような新鮮さを持った花弁であった。入院して数日、咳と花弁に疑問を持っていた彼女は昼の往診に来た担当医師に尋ねる事にした。
「先生、私はただの風邪では無かったのですか?これから高熱が出るかもしれないと大事を取って入院手続きをするように言われましたけど…花弁なんて…」
「もう隠してはおけませんね。レアティーズさん、この病棟の名の由来を聞いた事はありますか?」
─花咲病院─
聞いたも何も入院の手続きの時の書類に書かれた名前を彼女はしっかりと記憶していた。元受診した外来の病院は小さな町の病院ではあったけれど、彼女が幼少の頃から受診していた信頼出来る病院だった。今後きっと熱が出るからと入院をすすめられるも小さな病院に入院設備などなくこの花咲病院を紹介された。この病院の中には大小様々な見た事もない花が咲き乱れ看護師が朝晩忙しそうに水やりをしている姿をよく見かける。
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