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この病棟の花々の中には患者が遺していった種から芽吹いた物も多く気軽に片付けてしまう事も出来ず増える一方。本来目を楽しませ癒やしてくれる花であるが取り憑かれた側からすれば自分を殺す恐ろしい物となってしまったようだった。
ほとんどの患者は与えられた部屋を出ずに居る。けれど彼女は部屋を出、看護師の花の水やりを手伝ったり日光浴も兼ねて外に植えられた花を見に行き穏やかに笑っている。
「最近は花の世話をまたしているからなのかとても気分が良いのです。皆様もなされば良いのに」
花を愛し愛された彼女。彼女は次第に水しか必要としなくなりそれ以外の物を受け付けなくなっていった。多少の栄養は点滴で補えても人は物を食べれなくなると次第に体は弱ってしまう。食べる事で栄養を取り入れる事が出来なくなり痩せていった彼女はそれでも花の世話や外の花を見に行く事は辞めず最期は病院の花々の中でも特に気に入っていた薔薇園の中で短い生涯を終えた。
死後開かれた彼女の内腑からは美しく瑞々しいアネモネの花が見つかったと言う。その花が持つ花言葉は【君を愛す】
その意味の通り愛されたが故に彼女は連れて行かれてしまったのだった。
彼女の体内から取り出された花は生前の彼女たっての希望で綺麗に洗い清められ庭園の一角へと植え替えられた。そしてその傍らには彼女がオフィーリアと呼んでいた薔薇も。
「レアティーズさん、貴女の花は仰っていた通り彼女からの贈り物だったようですよ」
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