オフィーリアの寵愛

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アネモネの傍らに植えられた薔薇は今や彼女の忘れ形見ともなってしまったその花を守るように、囲むように増殖を続け時折季節外れな花を咲かせて彩りを与えていた。 「お伝えしませんでしたが他の方々はもっと苦しんで亡くなっていかれました。貴女のように緩やかにそして穏やかに亡くなると言う事は稀だったんですよ」 病を得て尚花々を愛し続けた彼女に答えたとでも言うのか。かといってほとんど患者は自らの死を招く花を愛する事は出来ない。 ほとんどは一方通行で終わってしまう花達の数少ない愛の成就を思い儘ならない物だと溜息を漏らし彼女が導かれたであろう空へ視線を向けた。 夢見がちな子供のようだと笑われたとしてもきっと彼女はあちらの世界でもきっと花に愛され愛している事だろうと亡くなるまで彼女の担当をしていた 医師である男は思わずにはいれなかった──
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