旅する本

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旅する本

今日も失意のうちに、車窓にうつる冴えない男を見つめている。 その冴えない男は、誰あろう、この俺。 ハローワークに通い詰めるも、なかなか良い職はなかった。 そもそも、良い職とは何だろうか? やり甲斐のある仕事? 今まで一度たりとも、そんな仕事に就いたことがない。 所詮会社にとって、人は歯車でしかない。 合わない部品は挿げ替えられる。それだけの話だ。 合わない部品は、稼働には問題のない場所に置き換えられる。 今の世の中、そう簡単に人を切ることはできない。だが、朽ち果てさせることはできる。 俺もその一人で、圧力をかけられ続けて、辞めざるを得ない方向に向けられ退職した。 世の中、不公平だ。口ばかりで世渡りの上手い者は出世して行く。 真面目一本のやつが失敗すれば罵倒されるが、普段から上手くコミュニケーションをとってるやつらは、失敗しても、次は気をつけろよ、で済まされる。 そんなことを今更くよくよ考えても仕方がないのだけど。 目の前には、さまざまな年齢の人々が座っていて、皆一様にスマートホンの画面に見入っている。 その中でひとり、中学生が熱心に文庫本を読み耽っていた。     
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