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「…だれ?」
涙を拭いその優しい声に耳を傾けた。
「思い出して… ぼくたちの事を…」
「ぐははは!! 何をしている まだ戦いは終わっていないぞ!」
「思い出して… たーくん… ぼくたちの事を… いつでも側にいるよ…」
何度も繰り返される同じ言葉に意識を集中させていくと懐かしさから恐怖が薄れていくのを感じる。
どこかで聞いたことがある声… 麓の中学に通うようになると友達も一気に増え行動範囲が広がっていった武弘は森に行く回数も激減し、いつしか友達の姿も見えなくなるとその存在すら記憶の片隅に仕舞い込んでしまっていた… 沢山の友達の中で唯一話が出来る存在、シンバルを叩きながら歌を歌ってくれるおさるのマーチ、大切な友達…
「思い出した!! マーチ!!」
その瞬間、真っ暗な世界に光が戻ると森を覆い尽くしていた闇が消えそよ風が木々の枝を優しく揺らした。
「やっと思い出してくれたね たーくん!」
「マーチ! ゴロタヌキー!」
目の前でシンバルを叩くマーチと呼吸の度に大きさが変わるゴロタヌキの鼻提灯にクスリと笑みが零れた。
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