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「お疲れ様です先輩 お先でーす」
就業時間が過ぎるにつれ一人また一人とオフィスを出て行く。
「おー お疲れさまー」
そう答えたのは 『新藤 武弘 43歳 独身』 この物語の主人公である。
新作の携帯ゲームの制作に行き詰っている武弘はパソコンに噛り付いたまま左手を上げると後輩に見える様にヒラヒラと動かした。
「先輩もたまには帰った方が良いーっすよ」
「ああ たまにはな」
帰れるもんなら帰りたいよ
そう心の中で毒吐きながらも、意識は映し出されたキャラクターへと集中していった。
どれ位時間が経ったのだろうか…
静まり返ったオフィスに居るのが自分だけだと気付くと照明を1つずつ消していき、真っ暗な空間には武弘の使っているパソコンのディスプレイだけが煌煌と光を放っていた。
「ふぅー」
何時間も座り続けた椅子にもう一度座り直すと重すぎるため息を吐くと背もたれに身体をあずけボーっとディスプレイを眺め続けた。
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