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「あれ? えっと… 夢だよな?」
いつの間にか寝てしまった武弘、目を覚ますとそこは懐かしい森の中だった。
「あれ? なんか… おかしい?」
自分の声に違和感を感じて喉に手を当てると、今度は違う違和感が襲う。
喉仏が無くなりほっそりとした首、無精髭が生えていたはずなのに手で触れた感触はスベスベだった。
「え? 何だこれ? え? どうなってるの?」
目に映った手は小さくてまるで子供の手だし短パンから伸びる足にはすね毛一つ生えていなくて、状況が理解出来なくてどっちが夢でどっちが現実なのか分からなくなる。
九歳の少年に戻った武弘の不安を敏感に感じ取った森は光を失い一気に薄暗くなると強風が吹き荒れて嵐が来そうな前触れに恐怖が足されていく。
『ふはははっ! ここまで来た事を誉めてやろう勇者よ!』
地の底を這うような下腹部にズンと響く声が森を覆い尽くすと、武弘は恐怖で縮こまり震える身体をギュッと抱きしめた。
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