始まりの日

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 今日は親友が彼氏を連れてくるのだ。  美沙は、ちょうど到着した目的地方面の地下鉄電車に飛び乗った。  ドア際にポジションを取って背を預けると、ドアに映り込む自分の姿を見て、乱れたセミロングの髪の毛をさりげなく整える。  お互いに彼氏ができたら紹介しあうというルールを決めたのは親友だ。彼女は、自分の好きなものは何でも好きな人と共有したがる。  正直なところ、美沙はそれほど社交的なタイプではなく、初対面の人間といきなり顔を突き合わせて会話をするのは苦手だ。自分の趣味も自分ひとりで楽しめればいいし、恋人を友人に紹介するなんてことも、親友から提案されるまでは考えたこともなかった。  しかし、彼女の言うことはどんなに美沙の価値観と異なっていても、自然と受け入れることができた。理由はない。ただ心からの親友だからだ。  だから知り合って十数年の間、美沙は付き合うことになった男性を何度となく親友に合わせたし、モテる親友はそれ以上の頻度でこうした食事会を設けることになったのである。
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