始まりの日

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(美人は性格悪いっていうのが世の理っていうのに……彩乃ったらずるい)  性格も良く、こんなに素敵な彼氏まで手に入れるとは――。  美沙は目の前で幸せそうに会話を交わす恋人達を見ながら、軽い嫉妬心を覚えた。美沙はもう2年以上恋愛に恵まれていない。  しかし、同時に彩乃の幸せを強く願ってしまうのは、彼女という人間の魅力が成せる業なのだと思う。  やっぱりずるい――美沙はあらためてそう思った。 「彩乃からは色々聞いてます。取引先と言った新宿二丁目のゲイバーで大人気だとか、犬が苦手なのになぜか散歩中のワンちゃん達に懐かれちゃうこととか」 「彩乃、何で中野さんに俺の変な話ばっかりしてるの…」 「美沙は私の親友だもん。彼氏のかわいいところは美沙にも知っていてもらいたいの」  彩乃は悪びれない様子でニコニコと話し、それを見て宗太も諦めた様子で苦笑する。 「ごめんなさい、木村さんのカッコいいところもちゃんと聞いてますよ。とっても優秀な営業マンで、優しくて料理も上手なんだって、耳にタコができるほど」 「えっ……いやそんな……。って俺、せっかく褒められたのに謙遜しちゃダメか。中野さんは仕事も頑張ってて、しっかり者で優しいんだって彩乃は言ってますよ」 「3人姉妹の長女なので、何となく自分がしっかりしなきゃっていうところはありますね。彩乃のふにゃふにゃしたところなんて、私の妹を見てるみたい。……そんな彩乃の彼氏だから、どんな人なんだろうって思ってましたけど、実際木村さんにお会いしたら思ってた以上に素敵な人でびっくり。彩乃、本当に良かったね!」 「ありがとう、美沙!」
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