1章 愛のユリを咲かす者

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 赤く燃えた夕日が沈んで、暗い空にたくさんの星がきらめきだす夜。街の中心にある大きなアリーナから盛大な音楽が漏れていた。中では世間で注目を集めている男性アイドルグループ『桜花芳香(おうかほうこう)』が結成三周年を祝ったライブをしていた。  何色ものカラーライトがアリーナ内を照らしめぐり、彼らのコールに合わせてファンがレスポンスを返す。眩しいライトを浴びる彼らがパフォーマンスするメインステージの袖から、女性がひとり、時折楽しそうに踊りながら静かに彼らを見守っていた。  彼女は彼らの所属する芸能事務所『Season(シーズン) Product(プロダクト)』(通称:シープロ)の社長である。モデルを中心に芸能界へ輩出してきたが、三年前にアイドルプロジェクト『Team(チーム) LOVE(ラブ)』の立ち上げと同時に桜花芳香をデビューさせた。今後は残り三グループをデビューさせて、合同ライブも計画しているようだ。  憧れだったアイドルの企画が好評で三年も続いて、たくさんの人に彼らが愛されていて、この仕事を始めて本当によかったと、輝くアイドルとファンを見て社長は思った。  そんな時、ふとメインステージ最前列の客席にアイドルと同じ、それ以上に輝く男子を見つけた。見た目から中高生だろうか、周りは女性のファンばかりなのに負けないくらい盛り上がっている。この子、絶対スカウトしよう。ステージを見守っていた社長の目は、獲物を捕らえた肉食獣のようなそれに変わった。
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