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二度のアンコールを終えて、桜花芳香の結成三周年記念ライブは無事に終わった。規制退場のアナウンスにしたがって、各ブロックの席にいたファンは次々とアリーナを後にしていく。今回のライブで幸運にもメインステージ最前列になった逢羽真人は余韻に浸りつつ、アナウンスを待ちながら帰り支度をしていた。
「はぁ~……今回もかっこよかったなぁ、桜花さん。悠くん二回もウィンクしてくれた……」
「私は雅くんと何回も目があったよ~」
「いいなぁ~……って、えっ誰!?」
客席とステージの間に置かれている柵に女性(社長である)が、笑顔で真人に手を振りながらもたれていた。
「悠くんのファンなの?」
「いいえ、僕はオール担当、グループ全員が大好きなんです」
「グループ全員大好きかぁ~……どこが好きなの?」
「あの和風で妖艶なパフォーマンスが大好きなんです! いつか自分も、あのステージで歌って踊るのが夢なんです!」
社長は確信した。あの輝き、そしてこの憧れの強さ。こんな夢の塊のような男子を放っておくわけにはいかない。ジャケットの内ポケットから名刺ケースを取り出す。
「一度ここにおいで、待っているから。あと、気をつけて帰ってね」
名刺を真人に渡すと社長はステージの方へと走っていった。
「え? 待っているってどういう……」
真人はもらった名刺に目を向けると『Season Product 代表取締役』の文字を見て固まった。
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