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前日のライブの興奮と社長との出会いに気持ちが落ち着かないまま、真人は月曜日を迎えた。昼休み、真人は教室で親友の立花瑠馬にライブ会場での出来事を話した。
「というわけなんだ! だから次の土曜日、事務所に行くんだ!」
「一人で行くのか?」
「うん!」
「影が薄くて気づかれなかったらどうするんだ?」
「大丈夫! 異常に薄いのは学校だけだから!」
真人が学校で影を薄くするようになったのは、小学一年の時に将来はアイドルになりたいとクラスで発表して気持ち悪がられてしまったからだ。それから学校では、明るい性格を閉じ込めて影を薄くして過ごしてきた。
「そんなに心配だったら瑠馬も一緒に行く?」
「お前がいいなら行く。ちょうど部活も休みだから」
「よーし決定! 楽しみだなぁ~」
瑠馬とは小学生の時にダンス教室で出会い、二人組みのダンスでコーチや仲間に好評を得たことで一気に仲良くなった。同じ中学と高校に通うと、ダンス教室の時と同じようなキラキラとした視線を周りから浴びるようになった。
「ところでさ、なんか周りのすごい視線を感じるんだけど?」
「気にするな」
なんで自分たちに視線が集まるのか、真人は分かっていなかった。瑠馬はこのことに二年前、中学二年の時に気づいていた。どうやら自分と真人が一緒にいることで、芸能人並みのオーラが漂うらしい。なぜ瑠馬はそのことを真人に教えないのか。不思議がっているその様子が、小動物のようでおもしろいからだ。
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